ビジネスマッチングコラム vol.50

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名義株にひそむ問題点

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名義株とは

名義株とは、株式を所有している株主とは別に、株式を実質的には所有していないが株主名簿に記載のある株主の株のことです。株式を所有している株主と株主名簿に記載されている株主は、本来は一致していなければいけませんが、実際には何らかの事情で一致していない場合が多くあります。株主名簿には株主の氏名、住所、保有株式数、株式取得日などを記載します。会社法で作成が義務付けられていて、会社に保管することが定められていますが、会社設立時に作成してから株主の変更があっても名簿が変更されずに管理されていないことが多いのです。


名義株となってしまう理由

名義株が多い会社は、歴史の古い会社です。1990年以前の商法では、株式会社を設立するときは最低7人の発起人(会社を設立するときに資本金を出資した人)が必要でした。7人もの発起人が必要だったため、実際は経営者の1名が資本金を100%出資し会社を設立したとしても、家族や親戚、知人などから名前だけを借りることがありました。家族や親戚、知人などは実際には出資をしていませんし経営にも携わっていませんが、株主名簿に記載されるので、名義株主となります。現在の会社法では、発起人1人でも設立可能です。
ほかにも、相続税対策として名義株とすることがあります。親が持っている株式を子どもが相続するとき、相続税が発生します。会社の価値が高い場合は多額の相続税が発生することが考えられます。相続税がかからないようにするため、実際の株主は親であるにもかかわらず、子どもの名前を株主として株主名簿に記載し、名義株とすることがあります。ほかにも理由はありますが、結果として、名義だけの株主が存在するのです。


名義株を調べるのは難しい

上場会社であれば、必ず株主名簿が作成され、有価証券報告書に株主名や所有株数を記載するので、記載事項を確認できます。しかし、非上場会社で株主名簿が正しく管理されていない場合は、実際の株主を確認できる書類がありません。
会社で保管している株主名簿は株主名を記載しなければいけませんが、上記の様に実際の株主とは異なる株主が記載されている可能性があります。また、法人税申告書の別表二「同族会社等の判定に関する明細書」は株主名の記載が必要ですが、こちらも実際の株主と異なる可能性があります。法務局で実質的支配者リストの閲覧ができますが、こちらも正しく更新されていなければ、真の株主を知ることはできません。
また、名義貸与承諾書も同様です。一般に名義株にする際は名義貸与承諾書が作成されます。名義を借りた人、名義を貸した人、両方の名前が記載された書類です。ただし、作成されていない場合も多くあります。
そのほか、設立当時の資本金の出資者を調べる方法もあります。
どの方法でも調べられない場合は、創業者や創業者の親族、当時を知る者などに、実際の株主は誰であるのかを確かめないといけないかもしれません。
このように正しく管理されていないと名義株を調べるのは非常に難しいことなのです。


名義株のリスク

名義株を放置するとリスクがあります。実際の株主ではない名義だけの株主が、株主の権利を主張してくる可能性があります。あるいは、実際の株主が事業承継をする際に、株式を後継者に譲渡したくても、名義が異なるため株式を譲れないおそれがあります。株式を譲渡できたとしても、あとで株主かどうか問われたときに、トラブルが起きるかもしれません。また、M&Aで株式を譲渡しようとしても、買手から名義株のリスクがあるため、断られる可能性があります。買手に名義株があるのを知られないようにするため、株主名簿の書き換えなどを行うのは違法行為です。
実際の株主と名義の株主が存命であれば、名義株の確認がとれ、名義株を実際の株主の名義に戻すこともできます。しかし亡くなったあとでは、当時の事情を知る者がいなくなり、問題が複雑化する恐れがあります。名義株がある場合は、創業者が存命中に、整理をした方が良いでしょう。


名義株の解決方法

結論としては、一つひとつの問題を丁寧にクリアしていくしかありません。株主名簿に記載されているが株式を所有していない株主を、実際に株式を所有している株主に変更します。
名義株主である者と連絡がとれる場合は、その者に名義株であることの同意書や承諾書に署名・捺印をもらい、名義株であるということを証明します。そして、会社に株主名簿記載事項等証明書を発行してもらいます。この方法がスムーズです。
名義株主である者と連絡がとれても名義人変更の承諾を得られない場合、スクイーズアウトで大株主が強制的に小株主から株式を取得する方法や、会社に対して名義株を売却する方法などがあります。

名義株主である者と連絡がとれない場合は、全部取得条項付種類株式を利用する方法があります。全部取得条項付種類株式は、種類株式のひとつで、個々の株主の同意を得ることなく、株式を一旦すべて会社が取得(自己株式)することができます。そして会社が取得した株式を、任意の人に発行します。
全部取得条項付種類株式を発行するには、種類株式を発行していない会社の場合は、種類株式発行会社になるために定款の変更が必要となります。定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要です。

株主が所在不明の場合は、株主の同意を得ずに株式を取得できる売渡請求を利用する方法があります。ただし、所在不明の株主に5年間連絡を取り続けて所在不明であることを確認してからでなければできません。近年では、会社法の特例(経営承継円滑化法)で、要件を満たせば5年を1年に短縮する制度ができました。
これらは複雑な手続きが必要になるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する方が得策でしょう。


名義株についての判例

過去の判例では、名義を貸した者と名義を借りた者のどちらが株主になるかという裁判では、名義を貸した者ではなく名義を借りた者(株式を実質的に所有している人)が株主となる、と判断されています。(最判昭和42年11月17日)


名義株のM&A事例

たとえば、M&Aで全株式を買手に譲渡したいと考えている売手社長がいるとします。しかし、売手社長が保有している株式は半分で、残りの半分は名義株となっており、さらに株主が所在不明である場合を考えます。上記のように、株主が所在不明である場合は通常5年が必要ですが、要件を満たせば会社法の特例により1年にすることができます。しかし、M&Aを早く行いたい場合があります。株式100%をすぐに譲渡することは難しいですが、株式譲渡契約書に条件を入れることで、売手社長が保有している50%の株式を先に買手に譲渡し、残りの50%は後日譲渡することを約束することができます。


名義株問題

株式に関しての裁判では、名義株を問題とした訴訟が非常に多くあります。名義株を放置していると、トラブルへと発展する可能性があります。問題が起きる前に、名義株があるかを確認し、ある場合は対策を考えた方がよいでしょう。


最後に

名義株の解消、整理されたい方は、お気軽に<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。


2024.9.25掲載

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