ビジネスマッチングコラム vol.36

飛耳長目
サイバー仮想空間

中小企業の事業承継におけるデジタルスキルの壁

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昨今、世の中ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれ、デジタルスキルの求められる時代になっています。まさにM&Aの分野においてもデジタルスキルのレベルにより、充実したM&Aのサポートを受けられるか否かが決まります。
大企業ではデジタルスキルを学ぶ環境が多くあり、デジタルスキルが高い社員も多く在籍します。しかし中小企業では、人材不足や資金の問題などいろいろな要因からデジタル化を推進することはなかなか難しい状況です。さらに小規模事業者ともなれば、そもそもインターネット環境やPCなどの機器すら整っていない事業者も多く存在しています。その小規模事業者を下図のように整理してみると、デジタルスキルが高いといわれる事業者は約242万社中の約28万社で、残りの約9割の214万社はデジタルスキルが低いとされています。このように大手企業と中小企業、小規模事業者とのデジタルスキルの格差は大きく広がっています。

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※中小企業庁、総務省の統計を基に推計して作成


M&A市場でのデジタルスキル

M&Aはあとつぎ不在に悩む小規模事業者の事業承継の切り札として期待されています。ところがM&A市場でもデジタルスキルが必要となる場合が多く、売手もしくは買手を自分で探す場合も、インターネット上でプラットフォームに登録することが基本となります。したがってデジタルスキルが低い小規模事業者やデジタルツールに不慣れな高齢の経営者にとっては、相手を探すことができず廃業せざるを得ない状況なのです。つまり上図の214万社はM&Aの蚊帳の外に置かれているのです。
一方でM&A仲介会社に依頼する場合でも、デジタルスキルが高い会社からはオンラインで申し込みがあるので、優先的にデジタルスキルがある会社に対応することになります。つまりM&A仲介会社からのデジタルスキルが低い会社へのサポートも行き届いていないというのが現状です。
また社長の高齢化もデジタルスキルの壁に影響しています。東京商工リサーチによると2013年時点では社長の平均年齢が67.1歳でしたが、2022年には平均年齢が71.6歳まで上昇しており、高齢化し続けています。また、2022年の休廃業・解散の件数は49,625件で、倒産件数6,428件の約8倍にも上ります。当社が事業承継のお手伝いをした中小企業の中にも廃業やむなしと考えていた売手社長が多いのも事実です。さらに休廃業の企業のうち54.9%が黒字の企業なのです。この問題は日本経済にとっても非常に大きな損失といえるでしょう。

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(出典)東京商工リサーチ


中小企業M&Aの現実

中小企業庁では2019年から年間6万者の第三者承継(M&A)の実現を目標に掲げています。ところが、2022年3月末時点での公表ベース(中小企業庁)のM&A件数は3,403件です。達成率は5.6%程度で目標には程遠いのが現状です。
少し話はそれますが、M&A仲介会社などの仲介手数料の高さもM&Aの普及を拒む一つの要因です。仲介手数料の相場は譲渡価格の5%程度とされ、大手M&A仲介会社の手数料の相場は最低報酬が2,000万円程になります。アドバイザーとして相手を探したり資料作成をしたりする際にかかる手数料ですが、特に小規模事業者同士の案件では、事業の財務・会計状況や資産内容、法制度、契約関連の調査や書類作成などの業務負担には見合わないとされ、仲介が遠ざけられてしまいます。5億円程度の譲渡価格の規模でないと仲介会社を通じてのM&Aは難しいと推察されます。
また、中小企業庁によると、地域別のM&A割合では東京都が約25%を占め、次いで大阪府、愛知県、神奈川県と都心部に集中しており、地域格差もあります。このような要因から6万者の目標達成については非現実的であると考えられます。


国の支援

ひと昔前は、創業者の親族が会社を引き継ぐことが一般的でしたが、現在は将来への不安や借入金の担保など、経営者の重い責任を背負いたくないという考えから内部承継が減少傾向にあります。第三者への事業承継としてM&Aが選択として挙げられるようになりました。
背景には上記のようなM&A仲介会社などが増えたこともありますが、政府からの後押しもあります。中小企業庁から2006年に「事業承継ガイドライン」が策定・公表されM&Aの手法が紹介されました。2020年には中小企業向けのM&Aの手引書として「中小M&Aガイドライン」が策定されました。M&Aの進め方やM&A仲介会社などに依頼する場合の費用など、M&Aの知識がない経営者への後押しをするガイドラインとなっています。2022年には中小M&Aガイドラインなどの内容を充実させ「事業承継ガイドライン」が改定されました。


最後に

M&Aの市場は拡大してきましたが、会社を売却するにはなにかとハードルが高く躊躇している経営者の方も多くいます。中小企業があとつぎを探すことができないために廃業してしまうのは、日本経済を支えている経営資源を失うことになります。
もちろんデジタルスキルがなくてもサポートをしてくれるM&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)会社もあります。あとつぎ探しに悩まれていてM&Aを検討する場合は、一度M&A仲介会社などにご連絡し、デジタルスキルがなくてもM&Aをすることができるのかをご確認いただければと思います。

会社の売却を考えている方は<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。

2023.8.16掲載

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