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ビジネスマッチングコラム vol.35
M&A後の売手社長の役割①
M&Aをした後、売手社長は買手に会社を引き渡したら会社から直ちに身を引かなければならないと思われるかもしれませんが大体はそうなりません。売手社長の技術や運営方法、人脈などを買手に承継するための引継ぎが必要だからです。引継ぎ期間は、売手社長と買手が話し合って決定しますが、基本的に売手社長の希望が考慮されます。期間は半年~3年程度で、引き継ぐ事柄が少ない場合は3ヵ月程度ということもあります。売手社長にとって大切な会社を買手にしっかりと引継ぎ、会社というバトンが渡ったことを見届けてから身を引きたい場合は、2年や3年となることもあるでしょう。M&Aはディールごとにすべて事情が違いますので、両者の話し合いにより決定すればよいのです。思い残すことがないようきちんと引継ぎを行い勇退することが大切です。また、M&A後の売手社長の肩書きは、非常勤の顧問や相談役としてアドバイザーとして残ることが多いです。
M&A後の売手社長の役割➁
引継ぎ以外にもう一つ、ディスクロージャー(情報開示)も大切な役割のひとつとなります。M&A成立まではもちろん限られた人達だけで内密に行います。ですから従業員や取引先、金融機関など関係するステークホルダーにはM&Aが行われたことは公表していませんのでディスクロージャーが必要となります。
たとえば従業員への説明はとくに慎重に行わなければなりません。従業員は自分がこの先どうなるのかと不安に感じているので、業務内容や勤務時間、給与などの処遇はM&A前と変わらないこと、これまでとは変わらず安心して働けること、会社が成長していくためにM&Aが必要だったことを伝え不安を取り除きます。これをおろそかにすると大量離職を招くこともあります。取引先の場合は、株主や社長が代わると取引を停止されてしまうかもしれません。M&A後もスムーズな取引を継続するために、取引先へ何度も訪問したり時間をかけて説明を行ったりする必要があります。※取引における契約書を交わしている場合は、事前に了承を得なければならない場合もあります。
ディスクロージャーを誰にどのタイミングでどのように行うかは、売手買手双方で話し合いながら丁寧に対応する必要があります。M&Aはゴールではなくあくまでも手段です。シナジー効果を発揮することができてはじめてそのM&Aは成功だったといえます。ディスクロージャーはシナジー効果を生み出すためのPMI(経営統合)の第一ステップとなります。
M&A後に会社に残っても役員退職金を受け取ることができる
売却後も引継ぎのために会社に残る場合、役員退職金を受け取ることができないのではないかと思われるかもしれませんが、売手社長が引継ぎのために会社に残った場合でも役員退職金を受け取ることができます。
税務上の観点から、2つの条件を満たせば役員退職金を受け取ることができます。1つ目は、経営上主要な立場にいた代表取締役が、売却後に経営上主要ではない立場になることです。2つ目は、M&A後の報酬がおおむね50%以下に減少していることです。つまり、代表取締役としての役職を実態として退任し給与を半分以下に減らせば、役員退職金を受け取ることができます。
株式だけを譲渡して代表取締役を続投する場合は実際の代表取締役退任時に受け取ることになります。
最終譲渡契約書に明記する
役員退職金を受取りM&A後も会社に残って引継ぎなどを行うためには、最終譲渡契約書に役員退職金やM&A後の引継ぎ期間、勤務条件、報酬を明記したうえで契約を締結します。すぐに代表取締役を退任する場合やそのまま代表取締役を継続する場合も、退任時期やその時の退職金の金額などを契約書に明記することで後々のトラブルを回避することができるでしょう。
最後に
売手社長はM&A後も会社に残り引継ぎなどができますが、そのためには株式譲渡契約書などにおいて条件を前もって定めておく必要があります。また、役員退職金を受け取るためには手続きや税務上の確認が必要になりますので、必ず専門家にご相談ください。
会社の売却を考えている方は<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。
2023.6.28掲載