ビジネスマッチングコラム vol.34

飛耳長目
銀行の大きな金庫の画像

非上場会社の自社株買い

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自社株買い(金庫株)とは

自社株買いとは、会社が自ら発行した株式を株主から自己資金で買い戻すことです。通常、企業は主に資金調達を目的に株式を発行しますが「自社株買い」はその逆の動きになります。日本では長い間、不当に株価を上昇させる恐れがあったため自社株買いは原則禁止されていましたが、2001年の商法改正により金庫株が解禁され、自社株買いが全面的に自由になりました。

上場会社の場合は株式市場からの購入と株式市場外での公開買付による購入、非上場会社の場合は株主と直接交渉を行い株式を購入します。また、自社が自社株を保管することから「金庫株」ともいわれます。金庫株は消却あるいは再放出ができます。


非上場会社が自社株買い(金庫株)をする理由

1.株の現金化
非上場会社が自社株買いをする理由の多くは、株式を保有する株主が株式を現金化したいという要望に応えるためです。しかし、非上場会社は株式を自由に売却することができません。非上場会社の株式を売却したい場合は、株主が発行会社に対して株式の買取請求を申し入れる必要があります。

2.スムーズな事業承継
後継者に十分な資金力がない場合に自社株買いを行う方法があります。現経営者が株式を100%保有している場合、自社株買いを100%行うことは議決権がなくなるためできませんが、後継者は資金のハードルを下げて株式を取得することができます。金庫株には議決権がありませんので、後継者の議決権は100%になります。また、後継者に株式が譲渡される場合、多額の相続税が必要となる場合があります。相続税は原則的には現金での納付が必要です。後継者に資金力がない場合、自社株を会社が買い取り、後継者が譲渡代金を受け取ることで資金を確保することができます。

3.ステークホルダーへの福利
自社株買いは株主への利益還元のためにも行われます。金庫株には議決権は与えられていません。そのため自社株買いを行った自己株式は、発行済株式総数から除外されます。したがって、発行済株式の株式1株あたりの利益が増え、1株あたりの株価の上昇が期待できます。株価が上昇すれば、既存株主への利益還元につながります。 ほかには、自社株買いを行い保有株式を役員や従業員への報酬となるストックオプションの付与のために行うこともあります。役員や従業員にとっては自社株を割安で買い株価上昇時に高値で売ることができるのでメリットになります。

4.株式の分散防止、経営の安定化
自社株買いを行うことにより、株主を減少させ株式の分散を防ぐことができます。たとえば、株主が多数に分散している場合、株式保有比率により行使できる権利は異なりますが、多くの株主が発言権をもつとスムーズな意思決定ができません。したがって株式を集約することで、経営の効率化・安定化を図ることができます。
M&Aでは全株式譲渡がもっとも多いため、スムーズな事業承継にもつながります。

自社株買いの注意点

1.会社のキャッシュが流出
自社株買いを行う場合は、会社の手元資金を使うため資金力が必要です。基本的には現金で買い取るため手元資金が少ない場合は、財務状況に悪影響を及ぼしかねません。

2.財源規制の遵守
自己株式の取得には、財源規制(分配可能額)があります。自己株式を取得する時点での分配可能額の範囲内でのみ取得ができます。分配可能額は、簡単にいいますと、剰余金(=その他資本剰余金+その他利益剰余金)を超えてはいけません。また、直前期の決算書で財源を算出し、自社株式の取得を行った期の期末においても剰余金がプラスでないといけません。また、純資産額が300万円を下回る場合は自社株式の取得はできません。

3.みなし配当に該当する恐れがある
株主は会社から配当金を受け取っていないにもかかわらず、配当金とみなされる恐れがあります。簡単にいいますと、自社株買いにより株主が受け取る価額から株主が出資した額(自社株を取得した際に支払った価額)を差し引いた額がみなし配当として課税されます。
また、みなし配当と該当した場合は、会社側は源泉徴収が必要となります。

最後に

自社株買いは、事業承継の対策や株式分散の防止等に活用できる手法です。非上場企業の場合、この手法はまだそれほど浸透していませんが、今後は事業承継のために増えてくると思われます。また、自社株買いは原則自由ですが会社法上の規制や社内手続きがありますので、必ず専門家にご相談ください。メリットとデメリットをご理解された上で自社株買いを有効活用してみてください。

※自社株買いや株式の集約、事業承継についてご質問等ございましたら、お気軽に<support@gift-map.jp>宛に相談してください。

2023.4.12掲載

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