ビジネスマッチングコラム vol.37

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M&Aの譲渡価額1円 “備忘価額”とは

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M&Aの株式譲渡価額は、通常、現在の資産価値や将来のキャッシュフローを見越して算出した会社の株式価値です。スモールM&Aでも数百万円程度で売出しているケースが多いですが、時折その譲渡価額が備忘価額と記載されていることがあります。備忘価額とは、実質的には価値がなくなってしまった資産に、税務上や会計上では資産があることを示すために付ける金額です。価額を0円にしてしまうとその資産は存在しないこととなり税務上や会計上では忘れられてしまうことから、1円などの区切りがいい金額を付けます。業績不振などにより負債額が資産額を上回る債務超過の会社などは譲渡価格を付けることができないため備忘価額を用いることがあります。備忘価額は1株=1円が一般的です。1円買収と呼ばれたりします。


売手にとっての最善策

出口が見えない状況で経営を続けていると、ときに先々の不安が募ってきます。たとえば売掛金の回収ができなかったり債務の支払いが遅れたりすると、資金がショートする前に廃業しようと考えることが多いでしょう。ところが廃業するにも債権・債務の整理にかかる費用、従業員の退職金などの多額の費用、税理士や弁護士、司法書士などへの委託料などがかかります。また、株主総会での解散決議、清算人選出や解散登記など多くの手続きも必要になります。そのため経営者としては、タダでもいいので会社を買い取ってほしいとなるのです。無償でも会社を譲渡することができれば、従業員の雇用の維持はもとより、社長の保証債務の解消や先述した手続きなども回避することができます。当社がお手伝いした売手社長は、無償で会社を譲渡したことにより、経営者としての責任を果たされハッピーリタイアすることができました。今年に入ってから当社でご成約された内の2件は無償譲渡でした。
ただし、タダなら買収してもらえるかもしれないと思われるかもしれませんが、財務状況が悪いことは買手からするともちろんリスクになるので、その点は注意が必要です。


有償譲渡と無償譲渡

実際に株式を0円で譲渡すると、無償譲渡となり課せられる税金が売手、買手ともに複雑になります。それに比べて有償譲渡において課せられる税金は売手、買手ともにシンプルです。
株式の有償譲渡の場合は、株式の譲渡で得た利益に対して、売手が個人の場合は所得税、復興特別所得税(2037年まで)、住民税が税金として発生し、売手が法人の場合は法人税が発生します。買手は、原則的には課税の対象ではありません。株式の無償譲渡の場合は、株式の譲渡が個人から個人、個人から法人、法人から個人、法人から法人の場合で、売手・買手ともに発生する税金が異なり煩雑です。そのため、無償譲渡よりも有償譲渡を選択するケースが多いのです。
前述した無償譲渡というのは、意味合い的には株価が0円ということですが実際は1株=1円で譲渡しています。いわゆる1円譲渡、1円買収といわれるものです。


買手にとっての1円買収

買手は、タダで会社を譲り受けていますが、その会社には多額の負債があったりキャッシュが不足したりしていることがあるため、必要とされる実質の金額はタダではありません。たとえば、1億円の債務超過である会社を買収すると、債務超過の1億円を背負うので、実質1億円で買収したことになります。必要最低限の運転資金も足りなければ、その資金も必要になります。買手は、そのようなリスクとリターンを鑑みてそれでも価値があると判断すれば買収します。
買手にメリットがないようにみえますが、メリットは、人財(人材)の確保、新規分野参入、事業規模拡大、技術力向上、取引先の開拓・拡大などがあります。たとえば、売手が赤字続きで債務超過の会社でも、売上が数億円あるとします。売手は数億円を稼ぐ力を持っている会社です。買収することにより、その会社の人財、技術、機械、情報、特許権、ブランドなどの経営資本が手に入ります。時間をお金で買うという考え方です。買手の経営手腕により、収益力を高めることで、シナジー効果が出せる可能性があります。決して買手はタダだからではなく、その会社の将来性を買うのです。


最後に

備忘価額は、売手と買手の双方にとってのM&Aの成功に導くための手法の1つといえるかもしれません。廃業を考える前にM&Aを考えてみませんか。
会社の売却を考えている方は<support@gift-map.jp>宛にご相談ください。

※当社は税務についてのアドバイスなど、税理士法および弁護士法に違反する業務は一切行っていません。

2023.9.13掲載

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