ビジネスマッチングコラム vol.31

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会社の所有と経営の分離

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会社を起業し成長させるには、資本力と高い経営能力が必要です。しかし、その両方を獲得するのは容易ではありません。資本力のある人が会社の所有者(=株主)となり、高い経営能力をもつ人(=経営者)が代表取締役となり、それぞれが得意分野を活かすことにより会社の価値を高め成長させることができます。このことを「所有と経営の分離」といい、株式会社の原則の1つと言われます。

大企業と中小企業では

この原則を大企業で考えると、”株主≠代表取締役”であることが多いですが、一方、中小企業を見てみると、多くが”株主=代表取締役”であり所有と経営が一致していることが多いと思います。
このように、大企業では“株主≠代表取締役”であることが普通であるのに対して、中小企業では“株主=代表取締役”であることに違和感がありません。

大企業と中小企業の違い

会社法では大企業という言葉の定義はなく、大会社としての定義があります。大会社とは、会社法で資本金が5億円以上であること、または負債額が合計200億円以上あることと定義されています。
一方、中小企業基本法では、中小企業者と小規模企業者が業種ごとに定義されています。
たとえば製造業の場合は、資本金の額または出資の総額が3億円以下、または常時使用する従業員が300人以下を中小企業者、常時使用する従業員が20人以下であれば小規模企業者となります。サービス業の場合は、資本金額または出資の総額が5,000万円以下、または常時使用する従業員が50人以下であれば中小企業者、常時使用する従業員が5人以下であれば小規模企業者となります。※
※法律により定義が異なることがありますので、ご注意ください。
雇用している従業員の人数により、課せられる義務は異なります。たとえば従業員10人以上の場合、就業規則の作成届出義務や安全衛生推進者の選任義務などがあります。また、従業員が50人以上になると、産業医の選任や衛生委員会の設置、定期健康診断結果報告書の提出なども必要です。
会社の規模によりその企業が及ぼす周りへの影響力が異なりますので、課せられる義務もこのように異なります。

大企業の実態

大企業が、代表取締役=株主であった場合、ひとりですべての決定権を持ち独裁的に経営を進めていくと、偏った考えで事を進め誤った方向に進む恐れがあります。規模が大きい分リスクも大きくなります。決定権が代表取締役に集中しているため、暴走してしまうリスクが高いのです。大企業は時価総額が大きいために、株主も相当な資金力が必要になりますし、多数の株主からの出資が必要になることもあります。
大企業では事業規模や組織が大きく、事業が多岐にわたります。また、取引先が多く、経営に及ぼす影響も大きくなります。株主と代表取締役を分けることで役割分担が可能となり、より民主的な判断ができるようになります。株式を公開するのもその目的の一つです。
このように、所有と経営の分離はコーポレートガバナンス(企業統治)の強化にもつながります。

中小企業の実態

一方、中小企業の多くは代表取締役=株主です。その理由は、代表取締役が自分の資金で会社をつくり、代表取締役自身が経営を行ってきたからです。しかし、代表取締役=株主であるからといって、代表取締役(=株主)による会社の独占には直結しません。
所有と経営の分離には冒頭に記載したようにメリットもありますが、デメリットもあります。所有と経営が分離されていると、代表取締役が会社経営に対して重要事項を決めたいとき、株主から否決されたり、可決されるとしても株主総会の招集などに時間を要したりします。つまり大企業にはない中小企業の強みは、意思決定が早く、スムーズかつ柔軟な経営が可能なことです。これが所有と経営が分離されていないことの大きなメリットでもあります。
経営力も高く、株主としても資本力があり、代表取締役(=株主)として成長している中小企業が多いのも事実なのです。

最後に

矛盾していますが、所有と経営の分離がされている企業もされていない企業も、一言ではどちらが良いかとは表せません。大企業では所有と経営の分離がされていることが多く、中小企業では所有と経営の分離がされていないことが多いのは事実です。それぞれ長所と短所があるので、会社ごとの状況を鑑みて、分離か一致を選択するべきです。
今後の会社の成長を考える上で、所有と経営の分離について考えてみてはいかがでしょうか。

些細な事でもかまいません。お気軽に<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。

2023.1.4掲載

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