ビジネスマッチングコラム vol.30

飛耳長目
地球儀

ノンネームシートで優良なお相手を引き寄せる

Twitterシェア Facebookシェア LINEシェア Mailシェア

ノンネームシートの役割

「ノンネームシート」とは、M&Aの対象企業が特定されないように企業名を伏せて作成される簡易的な企業概要資料です(基本的にM&A仲介会社を利用する場合は、仲介会社がノンネームシートを作成します)。 なぜ企業名を明かさずに作成するのかといいますと、譲渡希望の売手企業が買手企業を探すときに、買手候補企業になり得るかわからない不特定多数の相手に売手企業名を公表することは、 噂の流出という大きなリスクがともなうからです。売手企業の情報漏洩のリスクを最小限にするために、まずは匿名での資料を使用することが必要です。売手企業にとって、M&Aに関することはトップシークレットなのです。ですから秘密を守ることができると確信した買手候補企業にしか企業名を明かしてはいけないのです。つまり売手企業が安心して買手企業を探せるようにするための資料が、ノンネームシートです。

売手企業は、買手候補企業がどんな企業なのかを知り、M&Aによるシナジー効果が得られるかを熟慮したうえで企業名を明かすものです。 仲介会社は、売手企業に興味があるからといって、すべての買手候補企業に売手企業名を明かし詳細な情報を開示するわけではありません。 仲介会社は、売手企業のエージェントとして心配する立場に立ち、しっかりと秘密を守ることができる相手かを見極めます。 また、本気で売手企業とのM&Aを検討する相手だけを買手候補企業として絞り込み、秘密保持契約(NDA)を交わしたうえで売手企業名を明かし詳細な情報を開示します。

ノンネームシートは売手企業をはじめに知る情報

買手候補企業は、売手企業名は伏せられてはいるものの、ノンネームシートの情報が売手企業とはじめて接触する情報となります。ノンネームシートの情報から、買手候補企業は自社のニーズにあうか、M&Aの話を進めるか否かを判断します。ノンネームシートは優良なお相手と巡り合うための大きな武器になるのです。

ノンネームシートの記載情報

ノンネームシートは、決まった形式やルールはありません。一般的には以下の項目を、企業が特定できないように匿名で記載します。
『業種、事業内容、(所在地、売上高、従業員数、経営者の年齢)、譲渡形態、譲渡理由、譲渡希望価格、PRポイント』
また()内の情報は売手企業が特定されないように幅をもたせてあいまいにする工夫も大切です。

重複になりますが、売手企業が特定されないようにするため、事業内容は詳細には記載しません。だからといって内容が大雑把すぎて、買手候補企業が売手企業をイメージできなくても困ります。上手くバランスを保ちながら記載する必要があります。
事業内容の項目だけではなく、所在地や売上高などすべての項目において、売手企業が特定されないようにしなければなりません。たとえば所在地を“関東”と記載します。しかし、売手企業が関東のなかでも稀な存在であり、関東と記載しただけでも特定されてしまう場合は“東日本”などと記載します。反対に、売手企業の業種が数多くあり都道府県名まで記載しても特定されない場合は、“○○“県と記載しても大丈夫です。
従業員数は、どれくらいの企業の規模なのかをイメージできる項目となりますので、“○名~○名”、“約○名”など、おおよその数を記載します。ただし、特定される恐れがある場合は記載しなくても大丈夫です。
譲渡形態は、“株式譲渡”、“事業譲渡”などと記載します。中小企業のM&Aの場合100%株式譲渡が一般的ですので、そうでない場合はその旨を記載します。
希望譲渡価格に「応相談」と記載があるノンネームシートが多くあります。希望譲渡価格を決めるのは難しいかもしれませんが、買手企業の立場で考えると、価格は提示されていた方がイメージしやすくなりますので、専門業者と相談し提示することが望ましいです。

ノンネームシートに多くの情報を記載すれば売手企業が特定されるリスクが高まり、だからといってあいまいな情報を記載すれば、売手企業の魅力は伝わりません。売手企業を特定されない、けれども買手候補企業がイメージできる適切な情報量で、売手企業について上手に表現することが望ましいです。

ノンネームシートは重要なはじめの一歩

ノンネームシートは誰にでも作成できるように思われがちですが、作成するにはセンスが求められます。
たとえば、売手企業にとってM&Aを行うと大きなシナジー効果を生み出せそうな買手候補企業がいたとしても、ノンネームシートの情報から売手企業の魅力が伝わらないと、M&Aの検討に進みません。優良な相手とのマッチングチャンスを逃すことがあれば機会損失になってしまいます。
作成自体は誰でもできますが、そのノンネームシートが威力を発揮できるかどうかが肝心です。
つまり作成されたノンネームシートの出来栄え次第で、最高の買手企業を引き寄せることができるか否かが決まるのです。マッチング成功に向けたはじめの一歩といえるでしょう。

ノンネームシートの取り扱い

ノンネームシートは企業名を伏せた資料ですが、それでも資料の取り扱いには十分な注意が必要です。
一般的なノンネームシートには注意書きとして、「本情報は、絶対に情報が漏洩されてはならない極秘情報ですので社外秘です。第三者への開示、2次配布は厳にお控えいただき、取り扱いには十分ご配慮くださいますよう、お願い申し上げます。」といった内容が記載されています。万が一にでも情報を漏らしたとなれば経済的・道義的責任を負うことになります。
M&Aは『秘密にはじまり、秘密に終わる』といわれる程、どの場面においても秘密保持が大切です。秘密厳守で進めながら運命のお相手と巡り合いたいですね。

M&Aをご検討中の方、M&Aの進め方を知りたい方は<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。

2022.11.22掲載

Twitterシェア Facebookシェア LINEシェア Mailシェア

ページトップへ