ビジネスマッチングコラム vol.28

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M&Aで株式譲渡を進めていくには

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中小企業におけるM&Aの株式譲渡は、発行済株式すべてを譲渡するのが一般的です。それは、株式を100%保有していれば、一点のくもりもなくすべての意思決定ができるからです。会社は原則的に株主のものなので、会社の経営に対する影響力が、株式の保有比率により変わります。つまり、株式の保有比率により行使できる権利が異なるのです。株式保有比率によって付与される株主の権利を知っておくことは、会社経営をしていくうえで大切です。

株式保有比率に応じた株主の主な権利です。

株式保有比率 株主の権利
1株以上 株主代表訴訟
1%以上 株主総会の議案請求権
3%以上 株主総会の招集請求権、会計帳簿閲覧謄写請求権
1/3以上 特別決議を単独で否認する権利
1/2超 株主総会の普通決議を単独で可決する権利
(取締役・監査役の専任、役員報酬の変更などを決めることができます)
2/3以上 株主総会の特別決議を単独で可決する権利
(定款変更や事業譲渡、解散、清算、組織変更、合併など、会社経営に関する重要事項を決めることができます)

株式保有割合のケース別による株式譲渡

たとえばある会社の社長が自分の会社の株式を100%譲渡したいと考えた時、株主が社長一人の場合と社長以外にも複数いる場合をケース別でみていきましょう。

ケース1:社長1人が会社の株式を100%持っている場合は何の問題もありません。すぐに譲渡の準備に入ることができます。
ケース2:社長と奥さまが株式をそれぞれ持ち、2人あわせて100%持っている場合は、奥さまが同意されていれば問題ありません。
ケース3:社長とその他役員複数名が株式を持っている場合は、役員全員が譲渡に関して同意していれば問題ありません。
ケース2やケース3は、株主全員が会社を譲渡するという同意があれば、問題なく株式譲渡を進めることができます。

ケース4:社長とその他複数名が株式を持ち、そのうち何名かの株主が株式譲渡に反対している場合。この場合は、社長は反対している株主より株の譲渡に対する合意を得る必要があります。
このように株式が多数の株主により保有されていることを“株主の分散”といいます。非上場会社の場合、同族以外に株主が分散するメリットはあまりありませんが、過去の何らかの事情で分散しているケースも時々見受けられます。

分散している株式は特定の株主に集約することができます。これを“株式の集約”といいます。
株式の集約にはたとえば2つの方法があり、ひとつは事前に分散株主から株式を買い取る方法です。この場合には買い取るための資金が必要になりますので、資金に余力があれば可能ですが、株価が高いと難しい場合もあります。もうひとつは、主要株主が少数株主から委任を受け、社長が株主全員の代理人として株式譲渡契約を締結する方法です。この場合は株式譲渡時に買手から分散株主に株式の対価が支払われるため、資金面の心配はありません。

ケース4は、その他株主もM&Aについて事前に知っていることを想定しましたが、社長以外の株主が社外や従業員などにM&Aを知られたくない場合は、M&Aをしようとしていることを内密にしながら、株式を集約しなければなりません。将来の事業承継や相続問題などを理由として、M&Aを悟られないような口実をつくり対応していく必要があります。

所在不明の株主が存在する場合

ケース5:社長が保有している株式以外に、行方不明の株主が株式を保有している場合。
株主名簿に記載はあるが、連絡が取れなくなり所在が不明になっている株主を“所在不明株主”といいます。

・所在不明株主の株式売却制度とは

所在不明株主が存在する場合に手続きを行うには、5年の期間が必要です。所在不明株主に対して行う通知や催告が5年間到達せず、かつ継続して5年間配当金が受領されていない場合、その所在不明株主の保有株式を、売却、自社による買い取りが可能になります。
ところがこの5年という期間はあまりに長く、事業承継のハードルになっていることから、会社法特例により、非上場の中小企業のうち、事業承継ニーズの高い株式会社に限り、都道府県知事の認定を受けることと一定の手続保障を前提に、5年を1年に短縮することが可能になりました。
その後の手続きなどは、裁判所の許可が必要となります。
1.公告と催告の手続きを行います。株主が行方不明であっても、当該株主に対する通知・催告を省略することはできません。
2.取締役全員の同意により株式売却許可申立を行います(市場価格のない株式について競売以外の方法で売却する場合には、裁判所の許可を求める必要があります)。
官報公告や個別催告の結果、異議がでなければ、裁判所に売却許可の申し立てをします。裁判所への申し立ての際には次の疎明資料の提出が必要です。
履歴事項全部証明書、株主名簿、6年分の株主総会招集通知書・剰余金配当送金通知書および返戻封筒、取締役会議事録(取締役会設置会社で会社が買い取る場合)、 買取書(当該株式会社以外の者が買い取る場合)、官報(公告)、催告書および発出したことが分かる資料、 株価鑑定書、全取締役の同意書(取締役2名以上の場合)
3.裁判所から許可が下りれば、会社は所在不明株主の株式を買い取ることができます。
4.株式の売却代金は、法務局に供託します。所在不明株主のため代金を受け取る者がいないためです。
(会社法特例により裁判所の許可を求める場合の手続き方法は異なります。)

他にもスクイーズアウト(キャッシュアウト)と呼ばれる少数の株主から株式を強制的に買い取り、株主を締め出す方法もあります。

名義株がある場合

“名義株”がある場合も対応が必要になります。名義株とは、会社の株主名簿に記載されている株主と実質的な所有者が異なることです。
1990年以前の商法では、会社を設立する際の発起人は7人以上が必要とされてきました。お金を出したのは社長だけど名前だけを貸した、いわゆる名義借りを行っていることがあるかもしれません。名義株であることの承諾書などと念のため印鑑証明書も用意をして、株主名簿を書き換える必要があります。

中小企業においては、そもそも株主名簿を作成していないことが見受けられます。会社法で作成義務があるだけでなく、自身の会社の株主を把握するためにも株主名簿を作成しておきましょう。

株券発行会社の場合

また、2004年の商法改正以前は、すべての会社において株券を発行することが原則でした。株式不発行にするためには、定款に株券不発行を定め、株券不発行の旨を登記しなければなりませんでした。株券発行会社は、株式譲渡では株券を相手に交付しなければなりません。もし株券を紛失している場合には手続きが必要になり、その手続きに最低1年はかかります。

いまは株式譲渡や後継者問題を考えていなくても、いつか訪れる事業承継のために、いまのうちに株券不発行会社へ移行しておくとよいかもしれません。

気づいたときに早めの準備・対策を

このように、いざ株式を譲渡しようと決断したときに、株主が不明であったり株券紛失などをしていたりすると、株式譲渡までに非常に手間と時間がかかってしまいます。この記事を読んでくださった機会に、あとつぎ探しをしようかと、ふと頭に浮かびましたら会社の株主が誰になっているかを確認しておくとよいかもしれません。決心したときに、すぐに譲渡できるようにするためには、早めに準備に取り掛かることが大切です。
また、譲渡の予定がなくても、株式を集めておいたり、株券発行会社であれば不発行会社に移行しておくことで、トラブルを未然に防ぐことにつながります。

今回のポイントは、株主総会の特別決議を可決することができる3分の2以上の持ち株を社長ひとりで保有しているかどうかです。会社経営に関わる重要事項を社長の裁量と判断で決めることができれば、安定した経営が実現できます。

M&Aはその案件ごとにスキームが異なりますので、専門家にご相談されることをお薦めします。また、M&Aを行うための準備、株式の集約や株券不発行会社にする場合なども必ず専門家にご相談ください。
あとつぎを考え始めた方は<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。

2022.9.21掲載

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