ビジネスマッチングコラム vol.25

飛耳長目
画面いっぱいに株価チャートが映っています。株価チャートは、日々の相場の動きで、1本の線が忙しく上下に揺れ動きながら、左から右へと上昇しています。背景には、たくさんのグラフと無数のビルが映っています。もしかすると背景のビルの中にM&Aをして株価が上昇している会社がいるのかもしれません。

赤字企業や債務超過企業もM&Aできる

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会社をM&Aで譲渡したい場合は、財務状態が良い会社と悪い会社ではもちろん良い会社の方が譲渡成立がしやすく、悪い会社はマッチングの難易度が高くなるのは当然です。そのため、赤字企業や債務超過企業の社長は、はじめから会社を譲渡することをあきらめている場合が多くあります。「赤字経営の会社は誰もほしくないだろう」、「借入金が多い会社を継ぎたいと思う人なんていないだろう」と、思い込んでいます。「本当は会社を残したいけど、廃業するしかない」と肩を落としあきらめてしまっている社長が多いのが現状です。2020年に国税庁が発表した国内申告法人のうち、およそ66%が赤字の申告という現状もあります。事業承継を推し進めるためには赤字企業の対策が重要です。

M&Aは過去と現在も重要だがそれよりも未来をみること

また、買い手側も財務情報のみから”赤字経営”、”債務超過”と決めつけてしまい、その時点で買い受けの検討をやめてしまうケースが多くあります。
しかしそれでは、価値のある企業を見逃している可能性があります。むしろ問題が多い企業をあえて買い受け、買い手のリソースを使って改善していくことで改善率も上がります。もちろん買い受け価格を抑えることもできますので、その後の改革と再建により投資効果の向上も期待できます。これがまさにシナジー効果なのです。日本を代表するM&A巧者の日本電産がまさにこの様な戦略でM&Aを推し進めています。つまり財務諸表はあくまでも過去と現在の姿であり、M&Aの目的は未来の姿をつくっていくことです。

また補足ですが利益が出ていてもキャッシュフローが回っていない企業は多く存在します。フリーキャッシュフローが稼げていないのに、損益計算書(P/L)の利益だけを信じて買おうとしている買い手はもう一度慎重に検討することをお勧めします。

財務情報では赤字が出ている、債務超過になっているが、その企業の実質的な財務数値に洗い替えをすると本当は赤字ではなかったり、債務超過ではなかったりする場合もあります。つまり簿価上の数字と実態に即した数字は違うことがあるのです。
では、どうして赤字経営、債務超過の企業が実際はそうではなかったと言えるのでしょう。

赤字企業、債務超過企業の財務情報を実質的な財務情報に変換する

まず、”赤字経営”と”債務超過”の違いについて説明します。
どちらも経営状況が悪化している点は同じです。赤字経営とは損益計算書(P/L)の各利益が当該期間でマイナスになっていること、債務超過とは貸借対照表(B/S)で負債が累積で純資産を上回っている状態です。

下記3つのケースについてみていきます。
①一時的に営業利益が赤字の場合
一時的な営業利益が赤字の場合は、その赤字の原因が特定されており、翌年度からはまた利益の見通しが立てば、譲渡できる可能性は高まります。
②営業利益が継続的に赤字の場合
営業利益が赤字でも、実質的な利益であるEBITDAが黒字の場合があります。EBITDAとは、”Earnings Before Interest Taxes, Depreciation, and Amortization”のそれぞれの頭文字をとった言葉で、「利払い前・税引前・減価償却前利益」のことを指します。定義があいまいであり計算式は厳密に決まっていませんが、例えば代表的な計算をひとつ挙げますと、「営業利益+減価償却費」として計算をします。減価償却費は、固定資産の購入費用を分割して会計上の費用として計上しているだけなので、実際には費用としてキャッシュアウトをしていません。営業利益に減価償却費を加算することで、営業利益を税引前キャッシュフローに近づけた数値になります。
そのためM&Aにおいては、営業利益よりもEBITDAを重視されることが多いです。それ以外にも買収後には不必要になる経費なども洗い出して加味していきます。(役員報酬、家賃、交際費など)
③債務超過の場合
貸借対照表に計上されている金額はあくまで簿価です。とくに中小企業では税務署へ申告するための決算数字を書面にしている物ですのでそれを時価に修正することで、債務超過ではなくなる可能性があります。
資産を時価に修正すると、含み益が出ることがあります。たとえば土地を持っている場合は購入した当時の金額(簿価)で載せていますが、時価にすると評価額がプラスされる場合があります。また個人所有の事業用不動産は法人の資産ではありませんので個人から法人へ譲渡する場合はプラスの価値になる場合もあります。ほかにも上場株式を市場価格にしたり、保険積立金を解約返戻金に洗い出して含み益にする場合もあります。
また、負債に関しては、役員借入金を債権放棄したり、資本金に組み替えたりすることもできます。中小企業の場合、負債を社長からの借入金で占めることも多いので、それを債権放棄した場合や資本金に組み替え修正した場合は資産超過となることもあります。

スキームを検討

赤字や債務超過で会社を売却することが困難な場合や、価値が0という評価の場合、会社をすべて売却するのではなく、事業資産だけを切り出して売却する事業譲渡というスキームを考えることもできます。
会社=カンパニー=株式 ですので会社ごとの売却は株式譲渡というスキームになり、負債も含めてしまうので企業価値が下がってしまいますが、事業=エンタープライズ=事業資産のみの売却である事業譲渡のスキームであれば、資産価値のみなので売却価格は上がり、買い手を見つけやすくなる場合もあります。

買い手企業の節税対策

売り手企業に税務上の繰越欠損金があり、これを使用できる場合は、買い手企業は売り手企業が持つ繰越欠損金と通算することができます。翌年以降に発生した黒字と相殺でき、節税効果があります。しかし、繰越欠損金があっても引き継ぐことができない場合もあります。どのケースにあたるかは複雑なため、必ず専門家に相談してください。

最後に

このように、財務状況が悪化している会社でも譲渡することは可能です。誰にも相談されずに、引き継ぐことをあきらめてしまうのは非常にもったいないです。今まで育ててきた会社の価値を誰かに知ってほしいですよね。
赤字経営や債務超過の企業で後継者に悩まれている方は、<support@gift-map.jp>宛に相談してみませんか。

2022.3.23掲載

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