ビジネスマッチングコラム vol.21

飛耳長目
M&Aでは、最高レベルでの秘密保持が必要です。少しくらい部屋の中で、小さく光り印象的に映す鍵の画像は、秘密保持の重さと秘密を保ち続ける重要さを表しています。売り手の社長は、孤独との戦いでもあり、画像に見えている鍵は、思っているよりも重く冷たいものなのかもしれません。

秘密保持の重要性

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トップシークレット

M&Aは”秘密保持に始まり、秘密保持に終わる”といわれるほど、最高レベルでの秘密保持が必要です。
情報はまさに極秘でありトップシークレットの扱いとなります。

M&Aにおいては何よりもまず”秘密保持契約”の締結が必要です。M&Aでは最優先ともいえる契約です。初期の相談段階から、M&Aを進めるなかで取り交わされたすべての情報と打ち合わせ内容を第三者に開示しないこと、M&Aの目的以外には利用しないことを約束する契約です。

規模の大きい会社の場合は、会社として秘密保持契約を締結するだけではなく、検討チーム全員の個人名を入れて秘密保持契約を結ぶこともあります。それほどに、M&Aに関する情報は機密事項として取り扱わなければならないのです。

秘密保持契約が重要な理由

売り手の会社情報が漏えいすると、顧客や取引先との信用問題になったり、金融機関からは融資の打ち切りや貸しはがしを受けたり、あるいは従業員が知ってしまうと不安に陥って大量離職を招いてしまったりすることもありえます。
売り手だけではありません。買い手の情報も漏えいすると、経営戦略を知られてしまい、上場企業の場合はインサイダー情報に該当することもあります。

秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)は、M&A以外でも頻繁に締結されるため、抵抗がない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、決して軽々しく秘密保持契約を結んではいけません。「秘密保持ぐらい」ではなく『秘密保持とはとても重いもの』です。もし秘密をもらしたとなれば道義的責任のみならず経済的責任をも負うことになりますので、この点は厳しく注意を払う必要があります。

それでも起きてしまう情報漏えい

しかしながら、M&Aを進めていくと機密事項にもかかわらず、情報が漏えいしてしまうことがあります。
1番多いのは、売り手である社長自らが情報を漏えいしてしまうケースです。
売り手の社長本人は、まさか自分が情報を口外しているとは思わずに、結果として、そうなってしまうケースがあります。売り手社長は、今まで経験したことのない重大な決断をせまられますので不安で仕方がありません。そのため、一番信頼している奥さまだけには相談をしてしまいます。そして奥さまは、秘密保持の意識があまりないので外部の人に相談してしまいます。本人は口外しているとは露ほども思っていないのです。口外してしまう先としては、身内や仕入先などが多くみられます。こうした事態にならないためにも、奥さまに話をする前に、まずは私たちアドバイザーへお声がけいただくことをお願いしています。
このように情報を口外してしまう恐れが1番多いのは、意外にも売り手本人なのです。次に多いのが買い手です。買い手のなかでも譲受しようと考えている買い手ではなく、買いませんか?と提案されている初期段階の買い手です。はじめは秘密保持の重要性を意識しているため、絶対に口外しません。しかし、時が経つと次第に秘密保持の重要さの意識が薄れていきます。人が集まる会合などで知り合いと世間話をするなかで、たとえば金属加工業について話が出ると、何かの拍子に思い出し、「そういえば、どこかの金属加工会社がM&Aで売りに出していたなぁ」とぽろっといってしまうのです。その何気ない発言から連想されてうわさが広まり、どこの会社かまで目星がついてしまいます。もしその情報が誤報だったとしても、一度会社名が出てしまうとマイナスのイメージがついてしまいます。酒席などではうわさ拡大のリスクが高まります。 売り手・買い手はもちろんのこと、M&Aに携わる仲介会社、FAなども、機密事項を取り扱っているという意識を常にもっていなければなりません。

秘密を保持し続けるには

秘密保持の契約を締結して間もなくは、誰もが秘密保持の重大さを理解しているので、絶対に口外などしないと誓います。しかし、月日が経つと意識が薄まり、このぐらいなら話してもよいのではないか、とつい言葉に出してしまうのです。
たとえば弊社において、売り手買い手に関係なく毎回M&Aの商談の場では、”秘密保持の重要さ”についてしつこいほど繰り返しご留意いただけるようにお願いしています。秘密保持は当たり前と思っていても、ついうっかりということが起きてしまいます。しかしその“ついうっかり”は、決して犯してはならないことです。もし情報を漏洩してしまった場合は賠償責任が発生します。大切な情報を漏らすことで相手に大きな損害を与えることになりますので、そのようなことが起きないよう、損害賠償責任をしっかりと秘密保持契約には明記しましょう。
秘密保持契約を結ぶときは、当たり前のことですが全文を必ず確認してください。M&Aは専門性が高いので、契約書は必ず専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

こうした意識にくわえ、周囲の状況にも気をつけることが望ましいです。
M&Aに関する書類は鍵付きの引き出しにしまうこと、電話をするときは携帯を使用するなど誰にも聞かれない場所ですること、商談は誰にも聞かれない場所・見られない個室ですること、メールアドレスは何人かで共有しているものではなく個人のアドレスを使用すること、第三者には大まかな内容であっても決して口外しないこと…壁に耳あり障子に目ありです。
一つひとつの細かい意識が、秘密を保持し続けることにつながります。

孤独との戦い

M&Aの最終契約が成立してディスクローズするまでは特に、売り手の社長は孤独のなかで、M&Aを進めることになります。しかし、不安に負けて情報を口外しないように耐えなければなりません。一生に一度になるかもしれないM&Aを成功に導くためには、秘密保持はどんなことがあっても絶対に守らなければいけません。
そのような社長の孤独に寄り添えるアドバイザーに恵まれることを願ってやみません。

M&Aをご検討されている方は、<support@gift-map.jp>宛にご連絡ください。

2022.1.5掲載

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