ビジネスマッチングコラム

飛耳長目vol.16
廃業するにも手間とお金がかかる

廃業するにも手間とお金がかかる

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わが国の事業者数はおよそ400万社といわれます。新型コロナウイルスの感染拡大などの急速な外部環境の変化・競争環境の変化、後継者不在という根底にある大問題のなか、127万社もの事業者が廃業予備軍だと言われています。

経営者の出口戦略には、株式上場、事業承継、M&A、廃業が挙げられますが、中小企業の経営者の多くは、廃業を選択しています。少し前までは、会社は子どもに継がせるもの、親族に承継するもの、役員もしくは従業員に経営者の地位を譲り、会社の承継も行うことが普通でした。しかし現在は、子どもは違う会社に勤めている、親族に継がせられる人がいない、役員や従業員には重荷になるため承継できないなど、会社を任せられる後継者がいないため、やむなく廃業を選択するケースが増えています。

廃業は、ただ会社を解散するだけなので簡単だと思われている方が多いですが、実際にはたくさんの手続きが必要となり、かなりの費用がかかります。たとえば廃業するためには会社が契約しているすべての契約が満了するまで待つか、あるいは途中解約しなければなりません。取引先との契約やリース賃貸借契約、保険の契約など、すべての契約です。契約満了時期が近ければよいですが、途中解約する場合は解約違約金が発生するケースが多いでしょう。以下に廃業解散にかかる一般的な手続きの流れと費用をご紹介します。

一般的な廃業の手続きの流れ

1.営業終了日の決定
(従業員や取引先に廃業のお知らせ)
2.株主総会で解散決議・清算人選出
(株主総会を開き、発行済み株式数の過半数の株主が出席、かつ2/3以上の同意が必要。書面決議の場合は株主全員の同意が必要。清算人を定款で定めていない場合は、清算人も株主総会で選出)
3.解散登記・清算人選任登記
(解散日から2週間以内に法務局にて登記)
4.解散の届け出
(税務署や役所、社会保険などへの届け出・手続きが必要)
5.官報で解散の公告
(会社法による)
6.決算書類の作成、承認
(廃業するためには“解散”、“清算結了”の登記が必要となり、まずは解散時の決算書類のうち財産目録・貸借対照表について、株主総会での承認が必要)
7.解散確定申告
(対象期間は事業をはじめた日から解散日まで)
8.取引契約の清算、債権債務整理
(金融機関への申告と借入完済など。残余財産があれば株主へ分配)
9.清算確定申告
(残余財産が確定した日から1ヵ月以内に申告)
10.決算報告書の作成、承認
(残余財産の分配後、清算の決算報告書を作成し、株主総会での承認が必要)
11.清算結了の登記
(法務局にて登記を行う)

廃業にかかる費用

○解約違約金
○債権債務の整理にかかる費用
○商品在庫の整理にかかる費用
○建物の解体や原状復帰にかかる費用
○機械設備の廃棄費用
○その他固定資産の廃棄にかかる費用
○税理士への委託料
○弁護士への委託料
○司法書士への委託料
○社会保険労務士への委託料
○従業員の退職金

簡単に列挙しただけでも、これだけの内容があります。
不動産や商品在庫などを整理するときには、帳簿と時価の評価に大きな差が出てしまい、予定していた金額ほど高く売れず、手元に残る金額が少なくなることがあります。また、廃業するために仕事を少しずつ減らしていきますが、その間も固定費は変わらないため、資金がさらに目減りします。このように廃業をするためには予想以上に資金が必要となり、ふたを開けてみると債務超過となり、支払いができずに倒産する場合もあるかもしれません。普通に会社を廃業できるのは、債務を完済できる場合だけです。廃業後に債務を完済できないことがわかった場合は、倒産になります。このように、廃業するためには十分な資金が必要なのです。

自分で会社を興して育ててきたので自らやめる、という決断も経営戦略の1つです。しかし、せっかくここまで大切に育ててきた会社を閉じることに少しでも抵抗を感じている方は、少し立ち止まって考えてみてください。自分にとって、会社にとって、最良の選択なのか。後悔しない決断なのか。

廃業、事業承継の他にも、M&Aで未来につないでいく方法があります。社長の思いや技術、従業員を譲受先に託すことができます。M&Aでは企業は金銭的な資産だけで判断されるのではありません。事業の価値、技術の価値、情報の価値、職人の価値、従業員の価値などその企業のもっている価値すべてをお金と引き換えることができるため、赤字経営や債務超過でも、廃業するより手元にお金を残せるかもしれません。
また、社長1人の企業で、M&Aをする意味があるのか、と心配されている方は、不動産M&Aという方法があります。M&Aには変わりありませんが、不動産の価値をメインとしたM&Aです。事業そのものには価値が見出せなかったとしても、不動産には価値があります。土地、建物の価値から、手元に現金を残せるかもしれません。昔取得した土地が現在では地価が上がっているケースもあります。また、不動産M&Aは通常の不動産売買よりも節税効果が高くなるケースが多いのです。
一言でM&Aといっても、その会社の価値の見出し方1つで譲渡価格が違ってきます。

悔いなくハッピーなリタイヤができるよう、選択肢を広げて出口戦略を考えていただければ幸いです。

廃業に躊躇されている方、出口戦略に迷われている方は、<support@gift-map.jp>宛にご連絡ください。

2021.7.21掲載

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