ビジネスマッチングコラム

飛耳長目vol.12
役員慰労退職金を活用する

役員慰労退職金を活用する

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M&Aの実行は、税金との戦いでもあります。中小企業のM&Aでは、節税のためによく使われるスキームがあります。それは、株式譲渡価額の一部を役員退職金にすることです。
中小企業の経営者は、株主であり取締役であるケースが多く、この節税スキームが多用されるのです。

○売り手にとっての節税効果は

譲渡代金をすべて株式譲渡価格とした場合

株式譲渡益に対する税率は固定の20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)です。これは、譲渡益がいくらであっても一律です。

譲渡代金の一部を退職金とした場合

退職金に掛かる税金は、給与所得などの他の所得と比べて優遇されています。というのも、退職金は長年の勤務への功労と、退職後の生活の安定を目的として支給されます。したがって退職金は他の所得よりも優遇されるのです。

退職金の税金の計算方法は、
① (退職金-退職所得控除額*¹)×1/2=課税退職所得金額
  (*¹:退職所得控除額は勤続年数に応じた金額)
② ①×税率=退職金の税金
節税ポイントは、①の勤続年数に応じた額の控除と、その額が半分になることです(ただし、役員の勤続年数が5年以下の場合は半分にできません)。
所得税は所得が高くなるにつれて税率が高くなりますが、退職金の場合は勤続年数に応じて控除したあとさらに1/2を乗じるので、他の所得と比べ税金を抑えることができます。

上記の理由から、役員退職金は売り手にとって節税効果を生むのです。
但し、退職金をやみくもに増やせばよいわけではありません。退職金が高すぎると税務署から不相当に高額と指摘される可能性もありますし*²、退職金を増やしすぎると節税効果がなくなってしまうこともあります。
(*²:役員退職金の算定方法としてよく用いられる功績倍率があります。
 役員退職金=最終月額報酬×役員勤続年数×功績倍率
 社長の功績倍率の上限は3.0が一般的です。)
また、一度役員退職金が支給された場合は、役職分掌変更を明確にしなければ再度の役員退職金支給はできないため注意が必要です。

なお、本メールではわかりやすく説明するために役員退職金のみ記載しましたが、株式譲渡益からは株式の取得費やM&A仲介会社などへ支払う手数料も控除できます。

○買い手にとっての節税効果は

このスキームは買い手にとっても節税効果が見込めます。売り手の株式を買い手が単に譲り受けた場合、税の軽減はありません。しかし一部を退職金として支払った場合は、その退職金を決算時に損金に算入できるため、法人税が減額できます。買い手にとっても、退職金を活用することで節税効果が生じるのです。
ただし、買い手が将来この株式を譲渡する場合、取得価格が低くなった分、株式譲渡所得は増えてしまいますので留意する必要があります。

おわりに

譲渡価格の総額を変えず役員退職金を用いて内訳を変えることによって、双方に節税効果が生まれます。M&Aを検討される際には、譲渡価格だけではなく金額の配分も検討しましょう。
経営陣の長年の功績に報いるためにも役員退職金をぜひご活用ください。

こうした節税スキームには税金に関する専門的な計算が必要となりますので、M&Aのアドバイザーにご相談することをおすすめします。M&Aについてお考えの方は、<support@gift-map.jp>宛にご連絡ください。

2021.3.10掲載

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