ビジネスマッチングコラム

飛耳長目vol.11
株式譲渡の流れ

株式譲渡の流れ

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M&Aのスキームの1つに「株式譲渡」があります。株式譲渡とは、言葉の通り株主が自身の保有する株式を売ることをいいます。中小企業であれば、代表取締役である社長が株主であることが多いので、「社長が自社の株を売ること」になります。
中小企業のM&Aでは、株式譲渡はもっともポピュラーで多用されています。進めるうえで重要なことは、必要な手続きを一つひとつ理解し進めること。今回は、株式譲渡の流れを簡単にご説明します。難しそうに聞こえますが、実際にやってみるとそこまで難しくありません。

①株式譲渡契約書の締結

株式譲渡契約書は、言うまでもなく株式譲渡において根本となる大切な契約書です。この契約書に記載されていることが条件のすべてとなります。契約書に記載されている条件に沿って株式譲渡が行われますので、株式譲渡の契約書として必要な事項はもちろんのこと、売り手側の条件や買い手側の条件など、すべてが網羅されているか、売り手・買い手および関係者で十分にチェックすることが肝要です。

下記は、株式譲渡契約書に記載される基本的な項目です。
・株式譲渡の目的
・株式の種類
・譲渡する株数
・株式の譲渡日
・譲渡代金
・株式譲渡代金の決済方法と期限
・契約締結日
・株式発行会社
・売り手の氏名と住所
・買い手の氏名と住所

そのほかには、契約の内容によって異なりますが、下記内容が一般的な例となります。
・重要物品の引き渡し…会社の銀行預金口座の通帳やゴム印など、株式譲渡を行うにあたり引き渡す必要のある物品を記載します。
・譲渡日までの売り手の義務…売り手の役員の辞任届をとりまとめること、株式譲渡するまでに通常業務の範囲外の新たな設備投資を行わないなどです。
・譲渡日までの買い手の義務…株式譲渡が実行できるように準備することなどです。
・譲渡日後の売り手の義務…競業避止などがあります。
・譲渡日後の買い手の義務…売り手の役員退職金の金額と支給日告知、売り手の役員退任後の顧問契約締結、譲渡後の従業員の雇用契約の維持などです。
・売り手、買い手の表明保証
(表明保証とは、真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するものです。)
・契約解除時の双方の対応
・損害賠償・補償について

売り手、買い手がそれぞれ契約書の内容を精査することは大切ですが、両者で読み合わせを行うことをおすすめします。売り手、買い手ともに納得できるよう入念に契約書を吟味したうえで、契約書を作成し締結調印を行います。

②譲渡承認の請求

株式譲渡を会社に承認してもらうため、株式譲渡承認の請求を行います。
譲渡制限株式の場合、株主は発行会社から承認をもらわないと株式を譲渡することができません。譲渡制限株式かどうかは定款や登記簿で確認できます。
書類・・・譲渡承認請求書

③譲渡承認の通知

株式譲渡の承認機関は、定款に定めがある場合はその機関で承認の手続きを行います。まずは定款をご確認ください。
定款の事例として、代表取締役の承認が必要となっていることがあります。定款に定めがない場合は、取締役会設置会社では取締役会、取締役会を設置していない会社では最高決定機関の株主総会での決議が必要となります。臨時で開催することもあります。

株主総会、取締役会開催の場合は、その議事録が必要です。代表取締役の承認の場合、議事録は不要ですが、大事なことですので書面で残すのがよいでしょう。
書類・・・株主総会議事録 or 取締役会議事録 or 代表取締役決定書

株式譲渡の承認について、承認の請求を行なった人に株式譲渡の通知を行います。
書類・・・譲渡承認通知書

④株主名簿の書き換え

すべての株式会社には株主名簿を作成することが会社法で義務付けられています。
株主名簿はその名の通り、株主に関する情報を記載しています。株式譲渡を行い株主を変更した場合は株主名簿を書き換えます。
売り手、買い手ともに会社に対して株式名簿の書き換えの請求手続きを行います。
書類・・・株主名簿書換請求書、株主名簿(書換後)

株式譲渡では上記のような手続きが行われます。 契約後に問題が起きないよう、十分注意して手続きを行わなければなりません。

条件によっては

株式の譲渡だけでなく、条件によっては追加の手続きが必要です。たとえば、取締役変更の場合は変更登記や印鑑届出書の提出、個人所有の不動産の所有権を移転する場合は不動産登記の変更なども必要です。それぞれの株式譲渡契約の条件によって必要な手続きは変わってきます。株式譲渡だけなら理解しやすいかもしれませんが、その他の関連する手続きには専門的なことが多くなるため、専門家に相談するのが賢明です。ただ、M&Aはニッチな世界ですので、顧問弁護士だからといった理由のみで相談しても、正しい答えが得られない可能性があります。M&Aの経験があるかないかで、回答は大きく異なってきます。M&Aの経験がある弁護士、税理士、司法書士、M&Aアドバイザーに相談することが安心です。

株式譲渡をご検討されている方は、<support@gift-map.jp>宛にご連絡ください。

2021.2.2掲載

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