ご成約事例 case25
case25
歯車製造企業の技術途絶を惜しみ
長年の取引先が買受を決断
あとつぎがおらず、事業の畳み方を検討
疋田歯車製作所は創業62年の歴史を持つ歯車専門の金属加工会社。先代社長の急逝にともない、その長女で現取締役 小笠原久美子氏の夫である小笠原正明氏が1992年に専務として入社し、2003年に社長に就任。高品質な大型歯車の製造技術を武器に、安定した顧客基盤を築き上げ、これまでほぼ無借金で事業を運営してきた。しかし同社にはあとつぎがおらず、正明氏は頭の片隅でどのようにして事業を終わらせるかを常に考えていた。
疋田歯車製作所は大型の歯車加工をメインに手がける
シナジー効果が見いだせず、交渉は難航
同社が日本テクノと仲介契約を結んだのは2020年11月のこと。しかし歯車製作専門の同社とシナジーが見込める企業がなかなか見つからず、買い手探しは難航していた。小笠原社長は2023年10月に、偶然商談に訪れた取引先の株式会社帯刀ギヤー製作所の代表取締役 帯刀武士氏に「事業を畳もうかと思っている」と話した。それを聞いた帯刀氏が「疋田歯車製作所のすばらしい歯車製造技術を途絶えさせるわけにいかない。事業継続が図れるよう、買受を検討する」と買受の意思を表明した。
帯刀ギヤー製作所の工場は埼玉県吉川市に所在
M&Aアドバイザーが交渉をスムーズに進める
帯刀ギヤー製作所は1971年の創業。埼玉県吉川市に工場を設けており、中・小型の歯車および各種金属の精密部品加工などを行っている。同社では大型の歯車製造の依頼があると、加工機器が豊富な疋田歯車製作所に依頼することが多くあった。譲渡に関する実務や交渉などは日本テクノのM&Aアドバイザーが間に入ることでスムーズに進行。買受表明から約3ヵ月後の2024年1月、疋田歯車製作所の発行済み全株式を譲渡する株式譲渡契約が結ばれた。「今後については安心したという気持ちと、うまくいけばいいなという不安な気持ちが半々です。当面は顧問として帯刀社長を支えたいと思います」(小笠原氏)。「今いる従業員の雇用を守り、さらなる成長を遂げられるように事業運営を引き継いでいきます」(帯刀氏)。
株式譲渡契約の調印式より
同業者とのシナジー効果に期待
元々両社は長年懇意な関係にあった。帯刀ギヤー製作所としても従来は疋田歯車製作所に依頼していた加工を自社で受けるようになることで、業務の幅が広がり、売上拡大と利益率改善が見込める。当面は交流を通じ技術の承継を図るとともに、帯刀氏は今後、歯車加工部門を疋田歯車製作所に集約し、本体はマシニングなど他分野の加工事業を手掛けるといった構想も描いている。
両社の発展に向け力を合わせていく
(左から疋田歯車製作所 小笠原夫妻、帯刀ギヤー製作所 帯刀夫妻)
今回のM&A成立のポイント
- Point 1 | 長年にわたり築かれた良好な関係
- Point 2 | 加工現場が近接しており行き来しやすい
- Point 3 | 扱う品目の違いによる相乗効果
- Point 4 | M&Aアドバイザーによる交渉力