ビジネスマッチングコラム vol.63

飛耳長目
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繰越欠損金とM&A

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繰越欠損金とは

繰越欠損金とは、企業の財務上重要な税務制度です。税務申告をするうえで法人が税務上赤字(欠損金)を生じた場合、その赤字額を一定期間、将来の黒字(所得)と相殺することができます。これは法人税法で定められている仕組みで、企業の経営状況に応じて税負担が急激に増減しないようにするためのものです。
青色申告を行っている法人の場合、欠損金は原則として最大10年間繰り越すことが認められています。制度を利用すると、結果として課税所得が減少する場合があります。
近年、中小企業のM&Aが増加するなかで、繰越欠損金の存在が企業価値の評価に影響するケースがあります。また、繰越欠損金の具体的な扱いは法令や個別の状況によって異なるため、詳細な判断が必要な場合は税理士などの専門家への相談が推奨されます。

繰越欠損金を利用するための条件

繰越欠損金を利用するためには下記用件を満たす必要があります。
○欠損金が発生した事業年度に青色申告をしていること
繰越欠損金を利用するためには、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出している必要があります。白色申告の場合、原則として繰越欠損金の制度は利用できません。

○欠損金発生後も継続して確定申告を行っていること
繰越欠損金を利用するためには、翌年度以降も確定申告書を提出し続ける必要があります。期限内に申告が行われていない場合、制度の適用が認められないことがあります。なお、欠損金が生じた年度に青色申告をしていれば、翌年度以降に白色申告へ変更した場合でも制度が適用されるケースがあります。詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。

○帳簿書類などを保存していること
法人税法では帳簿書類の保存期間は原則7年間とされていますが、繰越欠損金を利用する場合は、欠損金が生じた年度から原則10年間の保存が必要とされています。保存期間は、帳簿の作成日ではなく、確定申告書の提出期限の翌日から起算されます。たとえば帳簿や領収書、決算書類などが適切に保存されていない場合、税務調査で欠損金が認められない可能性があります。

繰越欠損金の具体的な扱いは、法人の状況や法令の内容によって異なる場合があります。制度の適用に関して判断が必要な場面では、税務の専門家に相談することが望ましいでしょう。

繰越欠損金のメリット・デメリット

ここでは、制度を利用する際に一般的に挙げられる経営上のメリットとデメリットをまとめています。

○経営上のメリット
・キャッシュフローの最大化
繰越欠損金を利用することで課税所得が減少する場合があり、その結果として手元資金が増えるケースがあります。繰越欠損金は資金に余裕を生みだし、事業の立て直しや投資に充てやすくなるなど資金面の支援をする役割を担っています。
・中小企業を支援する制度である
資本金が1億円以下の中小企業については、一定の範囲で繰越欠損金を所得と相殺できる制度が設けられています。つまり中小企業に向けた経営支援制度なのです。
・税負担が軽減される場合がある
繰越欠損金を利用することで、将来の課税所得が減少し、結果として税負担が小さくなることがあります。したがってM&Aで会社を売却する時などは価格がプラスに働くこともあります。

例えばある年度に100万円の欠損金が発生し、翌年度に300万円の所得が生じた場合で説明します。
・欠損金を利用しない場合
300万円に対して課税が行われます。
・欠損金を利用する場合
300万円−100万円=200万円が課税対象となります。
繰越欠損金は古い年度から順に利用されるため、任意の年度を飛ばして適用することはできません。

○経営上のデメリット
会計処理が複雑になることがある
複数年にわたって欠損金がある場合、管理や会計処理が煩雑になることがあります。また、青色申告が前提となるため、複式簿記による記帳が必要です。
・融資審査に影響する可能性
金融機関が融資審査を行う際、決算書の内容を確認します。したがって赤字決算だと金融機関からの信用力が低下してしまいます。

個別の税務判断が必要な場合は、税理士に相談することをお勧めします。

M&Aで買収すると繰越欠損金は引き継げるのか

M&Aではさまざまなスキームがありますが、たとえば株式譲渡は会社が存続するため対象会社に繰越欠損金が残り、事業譲渡の場合は原則として引き継がれません。合併の場合は「適格合併」に該当すると引き継ぎが可能です。
適格合併とは一定の条件を満たすことで、被合併法人の資産・負債を帳簿価額で引き継ぐことが認められる合併形態です。
・持株100%の完全支配関係がある合併
・持株50%超の支配関係がある合併
・共同事業を行うための合併

ただし、適格合併に該当するからといえど、繰越欠損金が必ず引き継がれるわけではありません。制度上、節税目的の買収を防ぐためのルールが設けられており、一定の条件を満たさない場合には繰越欠損金が利用できなくなるケースがあります。

適格合併で引き継ぐための7つの要件

適格合併に該当するためには、類型ごとに複数の要件が設けられています。代表的なものとして、次のような項目が挙げられます。
1.従業者引継要件
被合併会社のパートや派遣など大部分が、合併後も引き継がれることが求められます。
2.事業継続要件
被合併会社が行っていた主要な事業が、合併後も継続されることが条件とされています。
3.事業関連性要件
合併会社と被合併会社の事業に一定の関連性があることが必要とされる場合があります。
4.事業規模要件
被合併会社と合併会社の間で売上高や従業員数、資本金などの事業格差が一定の範囲内に収まっていることが求められるケースがあります。
5.株式継続保有要件
支配株主が合併後も継続して株式を保有していることが要件とされる場合があります。
6.金銭等不交付要件
合併の対価として株式が交付されることが、適格合併の要件のひとつとされています。
7.完全支配関係
合併前に完全支配関係がある場合、その関係が合併後も維持されることが求められます。

これらは制度の概要を示したもので、実際の適用には詳細な要件が存在します。詳しくは税理士あるいは税務当局にご確認ください。

買収によるM&Aの繰越欠損金の注意点について

買収をともなうM&Aでは、繰越欠損金の取り扱いが法人税法上の規定により制限される場合があります。特に、法人税法57条の2では、一定の条件に該当すると買収前の繰越欠損金が利用できなくなる仕組みがあります。ここでは、制度の理解に役立つよう、一般的に挙げられる「一定の事由」の例をまとめています。
1.休眠状態の会社を買収し、新たに事業を開始する場合
買収直前に事業活動を行っていなかった会社を取得し、その後に新規事業を開始すると、繰越欠損金の利用が制限されることがあります。
2.旧事業を廃止し、大規模な資金調達をともなって新事業へ転換する場合
買収前の事業をすべて廃止し、その売上規模を大きく上回る資金調達を行って新規事業へ移行するケースも、制限の対象となることがあります。
3.特定株主が特定債権を取得し、大規模な資金調達を行う場合
株式の過半数を保有する株主が、対象会社に対する特定債権を取得して支配力を強め、さらに旧事業の規模を大きく超える資金調達を行う場合も、制限が生じることがあります。
4.上記1〜3が発生した後に適格合併などを行う場合
一定の事由が発生した後に適格合併や適格分割を行うと、欠損金の移転とみなされ、利用が制限されることがあります。
5.役員・従業員の大幅な入れ替えと新事業の大規模化が同時に生じる場合
買収前の役員が全員退任し、従業員の一定割合が退職し、さらに退職者が従事していなかった新事業の規模が旧事業を大きく上回る場合も、繰越欠損金の利用が制限されることがあります。

最後に

繰越欠損金は、過去に生じた赤字(欠損金)を将来の黒字(所得)と相殺できる制度であり、企業の税負担が変動する場面で役立つことがあります。キャッシュフローの最大化を目的に活用してみるのも良いでしょう。ただ、キャッシュフローは良くなりますが決算書の見映えは悪いので、一長一短ではあります。
制度の仕組みを理解しておくことは、企業経営において有益になるでしょう。特にM&Aの場面では、繰越欠損金の取り扱いが企業価値の評価や手続きに関係することがあります。ところが実際にどの程度利用できるか、引き継ぎが可能か、どのような制限があるかといった点は、法令や個別の状況によって異なります。
そのため、M&Aに関連して繰越欠損金の扱いを検討する場合には、事前に税務の専門家へ相談して下さい。

M&Aについてご質問などございましたら、お気軽に<support@gift-map.jp>宛にご相談ください。

2026.8.12掲載

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